BSE問題について考える


 牛海綿状脳症(BSE)、いわゆる狂牛病は、現在アメリカNYのテロ事件と並んで昨年からマスコミを騒がせている大きな社会問題だ。BSEは1986年にイギリスにはじめて発見された牛の疾病で、脳細胞が変性を起こして海綿状になる事からこの名称で呼ばれ、発症した牛が歩行困難をきたす、奇声を発するなどの神経症状を示して死に到る事から狂牛病とも呼ばれている。牛以外の動物には伝播しないと考えられていたが、1990年にイギリスでBSE感染牛由来のペットフードを食べた猫が死亡する、豚にも実験的に感染するなど、牛だけでなく他の動物にも感染牛組織を介して伝播する事が明らかにされている。
 BSEは羊の海綿状脳症であるスクレイピーに感染した羊の内臓やクズ肉が子牛に給与された濃厚飼料中に混入したために牛の間で広まったと考えられている。BSE感染牛は現在までに18万頭に達している。病原体はプリオン蛋白と呼ばれる核酸を持たない蛋白質で、感染性を持たない正常型プリオンはすべての哺乳類が保有している。異常型プリオンが正常型プリオンに作用する事で正常型プリオンが異常型に変えられてしまうと考えられているが、この変化のメカニズムについては未だ不明である。
 このBSEがただの家畜の疾病、あるいは人畜共通感染症として片付けられずにここまで大きな社会問題として取り上げられている要因は、イギリスにおいて1994年初頭から1995年後半の2年弱で、BSE同様に脳が海綿状になるクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)が10症例報告され、そのいずれもが従来のCJDと異なる新種のCJDであり、感染源がBSEに感染した牛である可能性があると発表された事にある。この変異型ヤコブ病は、2〜8年の潜伏期間の後発症、歩行困難、起立不能、痴呆などの症状を示し、発症後2週間から半年で死に到る。治療法も無く、致死率は100%の恐ろしい病気である。
 昨年になって日本でも3頭のBSE感染牛が発見され、日本中に大きな動揺をもたらした。その波紋は畜産業界のみならず牛を取り扱っていたすべての飲食店、食品販売店にまで及んでいる。畜産家では食肉用に肥育している子牛が全く売れなくなり、子牛の餌代ばかりがかさみ、毎日数十万ずつの赤字になっているという。このような状況に陥ってしまった背景には、日本の話題性のみを重視するマスコミの無思慮さと、それを鵜呑みにしてしまう消費者の不勉強がある。たしかに変異型ヤコブ病は発症すれば致死率100%と恐ろしい病気ではあるが、イギリスで実施されたBSE感染牛の材料のマウス等への接種試験により、危険部位は脳、脊髄、眼及び回腸遠位部に限られており、また国内では屠畜場ですべての牛にBSE検査を行うなど、安全面では細心の注意が払われている。つまり、現在のシステムに於いては、少なくとも牛肉や牛乳、乳製品等の食品に関して、市場で流通しているものは安全であるといっても差し支えない。
 しかし残念ながらBSEについてまだ解明されていない部分はあまりに多い。一般的にBSEの感染源は肉骨粉ではないかと言われているが、これも推測の域を出ないままである。BSEは潜伏期間が2〜8年と極めて長く、疫学的背景にも不明な部分が多く、感染体であるプリオン蛋白に関しても未解明な事が多いなど問題が山積みであるため、今後より詳しい研究が求められる。
 結論として、大切なのは、現代社会の中で氾濫する情報に踊らされる事なく、生きていくために必要な情報を自分で選ぶ事、そしてそのために必要な最低限の知識を身につけることだと私は考える。


コレ何よって人に。
最近絵を描いてる余裕が無いので大学の講義のレポートをUPして逃げました(逝け)
家畜管理学のレポートです。


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