快楽の呪詛
「ココ…ドコだ?」
痛む頭を抑えながら、彼女―ファリスは起き上がった。
石造りの床、そして壁。
窓は無い。
格子の嵌った扉が一つ。
見たところ、城などによく見られる地下牢のようだ。
そして彼女自身は、武器は取り上げられていたが、何の束縛も受けてはいなかった。
ただ、強く殴られた後ろ頭が痛い。
その痛みが、ファリスに何が起こったのか、思い出させていた。
王を亡くしたサーゲイドが不穏な動きを見せている。
そんな情報が最初にタイクーン城に届いたのは、ほんの一月程前の事だった。
しかしその後の経過は思わしくなかった。
サーゲイド王―ゼザの息子を名乗る赤髪の男がサーゲイドを仕切り、
その領土を広げるべく隣国への侵略を始めたのだ。
隣国であるバルから、救援を求める使者が遣わされてきた。
救援の部隊に先駆け、ファリスは少数の兵士とともに
バル城にいるはずのかつての戦友―クルルを訪ねる途中だった。
城を出て二日後、夜の宿営を野盗が襲った。
野盗相手に戦闘を始めたファリスたちの背後から、
サーゲイドの小隊が奇襲をかけたのだ。
虚を突かれた兵士たちは瞬く間に切り伏せられ、
残ったファリスも、抵抗及ばず捕らえられてしまったのである。
ガチャリ。
鍵を開ける音がして、格子付きの扉が開いた。
扉から入ってきたのは、20代後半くらいの赤髪の青年だった。
そう―現サーゲイド王だ。
「目がさめたか?」
端正な口元に冷ややかな笑みを浮かべて、彼は言った。
声もやはりどこか冷たい感じがする。
あのゼザの息子とはどうしても思えなかった。
「オマエか…こんなバカな事を始めた張本人は」
ファリスは海賊時代に鍛えた鋭い眼光で男をにらみつけた。
子分たちは、ファリスのこの目でにらまれるだけで怯え、戦意を無くしたものだ。
だが男は平然とその視線を受け流した。
「ザズ…だ。おまえ…タイクーンの王女らしいじゃないか。
悪いがおまえには、タイクーンを滅ぼす時の切り札になってもらうぜ」
「バカか、オマエは!のこのこ一人で俺の前に現れやがって!
この俺が大人しく人質になってるとでも思うのか!?」
言うが早いか、ファリスは男に襲いかかった。
もともと海賊育ち。体力には自信がある。
そして、1年前の世界を救うための旅も、伊達じゃない。
男を人質にとって、自力で脱出するつもりだった。
「…ッ!!?」
完全に入ったと思った攻撃は、空を切った。
それどころか、ファリスはザズに完全に押さえ込まれてしまっていた。
「勇ましいな…気に入った。おまえ、俺の女にしてやる」
相変わらずその口元に冷ややかな笑みを浮かべながらザズが言った。
「バカ言うな。誰がオマエなんかに」
「フ…いつまでそう言っていられるかな?」
不敵に笑って、そういい残し、ザズは去っていった。
何日が過ぎただろうか。
あれから毎日、ザズはファリスのもとへ来ては
彼女を一通りからかって去っていった。
ファリスのストレスは極限にまで高まっている。
そして。
いつものように鍵を開けてザズが入ってきた。
ファリスはその瞬間を狙って襲いかかった。
が、あっけなくかわされてしまった。
ザズに押さえ込まれて初めて、
ファリスは入ってきたのがザズだけではないことに気付いた。
黒衣を纏った男が2人、ザズに続いて入ってきていたのだ。
男たちは牢の中になにやら怪しげな模様を描き始めていた。
「何…するつもりだ」
ザズに押さえ込まれたまま、ファリスが問う。
「彼らは呪術師さ。
おまえがあまりに強情なんでな、少し呪術で細工する事にした」
心底楽しそうにザズが笑う。
「何するつもりだよッ!ちくしょう離せ!!」
渾身の力を込めて暴れるが、ザズはびくともしない。
模様を描き終えたのか、呪術師たちは牢から出て行く。
それを見てようやく、ザズはファリスを離した。
「先に言っておこう…これからおまえにかけるのは、色情の呪いだ」
「なッ…!」
さっと、ファリスの顔色が変わる。
それを見て、満足そうに笑うと、ザズは出て行った。
(体が熱い…芯が火照っているような感じだ…)
ファリスに掛けられた呪いは完成間近だった。
未だ意識は保っているものの、体は既に男を求めていた。
(嫌だ…嫌だよ…!バッツ、バッツ、助けてくれ…!)
朦朧とする意識を必死で保ちながら、
ファリスは心の中でバッツに助けを求めていた。
決して届く事のない叫びを、ファリスは心の中で繰り返していた。
更に時が経って。
再びザズが地下牢に入ってきたとき、
ファリスの瞳に、既に以前の強固な光はなかった。
「ン…」
『男』の気配に反応してか、ファリスの口から切なげな吐息がこぼれる。
ザズの口元に満足げな笑みが浮かぶ。
呪術は完成したのだ。
暗闇の中、二人の裸体が絡み合う。
一度呪術によって目覚めたファリスの身体は
ただただ快楽を求めつづけていた。
「はぁん…あっ…い…やぁ」
地下牢の中にファリスの喘ぎ声が響く。
「くくっ!いい感じじゃないか。
そら、こんなのはどうだ?」
楽しそうな笑みを口元に浮かべて、ザズはファリスを責める。
その指で、舌で。
乳房を、淫裂を、そして彼女の敏感な突起を。
「やっ…はァンッ!あぅ…ン」
そのたびにファリスは敏感に反応した。
焦らすように、ザズはファリスを弄びつづける。
「ンっ…はぁ…ン…ザズ…お、おねが…ンンッ」
ファリスは今やはっきりと男根の挿入を求めていた。
呪術と肉の快楽に流されて、もはや理性など残ってはいないようだ。
「コレが欲しいのか?」
にやりと笑ってザズは勃起をファリスの尻に押し付ける。
怒張の熱を感じてか、ファリスの口元に
ほんのりと喜色交じりの笑みが浮かんだ。
「いいだろう。入れてやるよ」
ザズももう堪らなかったのだろう。
「そら…いくぜ!」
ファリスの中心に怒張の先端をあてがい、一気に貫いた。
ぬちゅり。
湿った蜜音が地下牢に響く。
「はあぁん……ン…はぁン」
ファリスの口から喘ぎ声が洩れる。
ザズが抽送を開始した。
「くッ…そら、コレはどうだッ?」
時に激しく、時に緩やかに、強弱をつけてファリスを貫く。
そしてその間も指や舌でファリスの乳首や敏感な突起を責めつづける。
「ンッ…!はァンッ…!ぁンッ!」
ザズの責めの一つ一つにファリスは反応した。
二人の快楽のボルテージが上がっていく。
そして、それは一気にはじけた。
「くッ…!うぁあッ!」
「ンッ!はあぁぁん!」
ファリスの中が激しく痙攣収縮し、
同時にザズはファリスの中に白濁した液を吐き出した。
「くッ…はぁっはぁっ」
肩で大きく息をしながら、ザズは額の汗を拭う。
肉棒をファリスから抜こうとして、
まだファリスがザズのそれに絡み付いている事に気付いた。
「フ…この呪術は本当に強力だな…
この女がココまで好色になるとはな」
満足げに笑って、ザズは再びファリスを責め始めた。
「はァン…ンンッ!や…ぁ…あぅンッ」
愛撫に反応して、ファリスが再びザズを締め付ける。
射精して半萎え状態だったザズの剛直は、再び硬さを取り戻す。
そうして二人はもう何日も交わりつづけていた。
総指揮官である王がそんな状態にも関わらず、
サーゲイドの攻勢は衰えていなかった。
何より、突然の王女サリサの行方不明事件が
バル・タイクーン連合軍に大きな動揺をもたらしていたのだ。
バル城の陥落も時間の問題か。
そう思われた頃、連合軍に一人の剣士が現れた。
大地を思わせる茶色の髪、風のように爽やかな蒼い瞳。
かつて共に戦った、馴染み深い戦友、バッツだった。
単独行動が多いにも関わらず、彼の参戦は戦況を逆転させるに十分だった。
バッツの参戦からわずか十日後、
劣勢だった連合軍はサーゲイドを追い詰める事に成功していた。
自軍が劣勢である。
そう聞かされれば、ザズもいつまでも
ファリスと交わっているわけにもいかなかった。
ザズも戦場に出て指揮を執る事が多くなり、
ファリスの相手は見張りである兵士たちが交代でしていた。
術を掛けられた者を放っておけば、気が狂ってしまうからである。
しかしそうそうファリスの相手が勤まるものではない。
兵士たちが数名がかりで犯しているにも関わらず、
ファリスはまだまだ満足していなかった。
そんな状態が何日続いたろうか。
がちゃり。
鍵を開ける音がして、扉が開いた。
しかし入ってきたのはザズではなかった。
茶色の髪、蒼い瞳。
そう、バッツだった。
サーゲイド城は陥落した。
平原での合戦でバッツがザズを討ち取って以来、
サーゲイド軍は壊走、城もあっけなく連合軍の手に陥ちたのである。
ファリスの見張りの兵士たちは逃走し、
ファリスは既に二日、男を得ていなかった。
「ハァン……ン…ッ!」
とろんとした瞳で一人自慰に耽るファリスを見て、バッツは愕然とした。
「ファリ…ス…?…おいッ!どういうことだッこれは!!?」
捕らえた兵士の一人を、バッツは激しく問いただす。
「お、王が彼女に色情の呪いを掛けたんだッ!
じ、自分の女にするって…そういって!」
怯えたように、兵士はすべてを打ち明けた。
色情の呪いを解く術は、無い。
術を掛けられた者は、一生を肉の快楽の中ですごすしかないのだ、と。
「このヤロウッ!ファリスに、ファリスになんてコトを!!」
こみあげる怒りを抑えきれず、バッツは怒りに任せて兵士を斬り捨てた。
「ファリス…ファリス…!」
悲しみに、バッツの目から涙が溢れる。
ファリスを抱きしめて、バッツはただ泣いた。
五日後、ファリスとバッツはタイクーンに戻ってきていた。
英雄、そして行方不明だった王女の帰還とは思えぬほど
二人は内密に城へ戻ってきた。
事情を知るものは、わずかに数名だけ。
戦勝の高揚も束の間、タイクーンは深い悲しみに包まれていた。
『王女は、もう戻らない』
帰還後、ファリスとバッツは主の居なくなった飛竜の塔に篭り続けていた。
食事は日に一度、レナが運んでいた。
「俺がやる」
言い出したのはバッツだった。
「誰かがやらなきゃならないなら、俺がやる。
ファリスを救ってやれないのなら、せめて一緒に堕ちる所まで堕ちてやる」
唇を噛み締めて、バッツはそう言った。
覚悟を決めたその言葉に、誰も異議を唱える事は出来なかった。
暗闇の中で絡み合う二人。
二人の他は誰も居ない塔に、ファリスの喘ぎ声が木霊する。
ファリスの乳房を、淫裂を、敏感な突起をバッツが刺激する。
そして、全身に隈なく印を刻む。
「ンはっ……ぁンッ!あっ!ンンッ!」
ファリスは頭が真っ白に爆ぜたような感覚を味わっていた。
ザズはこうまで執拗な愛撫はしなかった…飽くまで自分が愉しんでいたからだ。
しかしバッツは違う―バッツはファリスを愛していた。
愛情を込めて、いとおしむように愛撫を続ける。
それは結果的に、ファリスに最上の快楽を与えていた。
「んンッ!ゃあ…っ…バ…ッ…あぅん……んっ…あ…っ…!」
バッツの首にしがみつき、何度も絶頂を迎える。
「ンっ…!…バ…ッツ…はぅン…ゃあ…ン…」
バッツもそろそろ限界だった。
屹立をファリスの中心にあてがい、一気に貫いた。
「ンはぁッ!」
一際大きな喘ぎ声が上がる。
「ぅ…くッ…!」
ファリスの中は熱く、蕩けそうだった。
「ぅあっ!」
達してしまいそうになるのを堪えて、バッツは抽送を開始する。
「はぁんっ! ンッ! ンっ! ぁンッ!」
激しく、時に緩やかに。
緩急をつけて、バッツはファリスを貫いた。
ファリスは頭の中が白く爆ぜたようだった。
かつて無い快楽。
ファリスはバッツだけを求めていた。
バッツを更に奥へと誘い込むように、バッツに腰を押し付ける。
応えて、バッツも更に腰を進めた。
ファリスは熱くバッツに絡みつく。
バッツもまた激しくファリスの最奥を突いた。
絡み合いながら、二人は快楽の絶頂へとのぼりつめていく。
時折強くファリスがバッツを締め付ける。
バッツは堪えるのに必死だった。
激しくファリスを貫きながら、バッツはファリスの突起を愛撫した。
「ンはぁッ!あぅンッ…!ぁああっ!」
その瞬間、ファリスはバッツにしがみついて絶頂を迎えた。
ファリスの中が激しく収縮し、いっそうきつくバッツを締め付ける。
バッツももう堪らなかった。
(ファリス…ファリス…堕ちて行こう…
救ってやれないなら、正気に戻してやれないなら、
せめて一緒に…ドコまでも堕ちて行こう……)
絶頂を迎えたファリスを抱きしめて、
バッツはファリスの中に大量の精を吐き出した。
(堕ちて行こうファリス…一緒に…どこまでも…)
FIN.
あとがきトカ。
しりうすのほうもつこの9000HITキリリク小説です。
アングラ系目指してみました。
いや、目指したわけじゃないんだけど。
のーみそ腐ってたんでアングラになったんですな。
やっぱり中途半端です…ゴメンナサイ(w;
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